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MOC米良理事長・齋藤理事特別対談

「逃げていいことは一個もねえ」が信条。宮崎経済界の若手リーダーが地元の課題解決に挑戦する“本音”とは?

▼リード

令和6年4月、宮崎市で業界の垣根を超えて地域産業の発展を目指す「宮崎オープンシティ推進協議会(通称MOC)」が発足した。行政支援のもと民間主体で活動する、公民連携の施策となる。初代理事長を務める米良充朝さんは、3代にわたり宮崎の経済界をリードする共立電機製作所の代表取締役社長。宮崎県新富町で農業ベンチャーAGRISTの代表を務める筆者も理事の一人となった。

設立から半年が過ぎたいま、改めて米良さんのMOCに対する思いを聞いた。

▼プロフィール

米良充朝(めら・みつとも)

株式会社共立電機製作所 代表取締役社長

米良企業グループの創業者を祖父に、現会長を父にもつ共立電機製作所の代表取締役社長。令和2年度に宮崎初の日本商工会議所青年部第38代会長を務めた、名実ともに宮崎を牽引する若手事業家。令和6年4月に設立した宮崎オープンシティ推進協議会(MOC)の理事長を務める。

宮崎オープンシティ推進協議会(MOC)とは?

農業、林業、水産業など、いわゆる「第一次産業」が盛んな宮崎県。令和4年度の農業産出額は全国6位、なかでも「肉用牛」「ブロイラー」「豚肉」「きゅうり」「米」「鶏卵」が上位を占めている。

宮崎県の農林水産業の概要

しかしながら農業従事者の高齢化や担い手不足、経験と勘に頼ってきた業界であるがゆえの技術革新の遅延といった課題は山積している。もちろんそれは第一次産業に限ったことではない。

宮崎市はそのような課題をオープンにすることで、革新的な技術をもつ地域内外の企業、スタートアップとのマッチングや共創を通じて、課題解決につながるイノベーション創出に一歩踏み出した。その役割を担うのが「宮崎オープンシティ推進協議会(=MIYAZAKI OPEN CITY COUNCIL、以下MOC)となる。

◾️宮崎オープンシティ推進協議会の主な目的・ローカルスタートアップの創出・地域企業のイノベーション創造・食産業・農業の革新と発展

ヒトやモノ、情報が集まり、常に門戸が開かれたまちづくりを進めるための「実践する組織」として、公民連携、産学連携を推進し、また業界の垣根をとっぱらい民間同士も連携しながら共創を推進していく。理事メンバーは、MOCのビジョンを体現したかのような多様な顔ぶれとなった。

▲MOCの創設発起人。左から清山知憲 宮崎市長、前田真吾(理事/前田労務管理事務所 所長)、村岡浩司(理事/株式会社一平ホールディングス 代表取締役)、米良充朝(理事長/株式会社共立電機製作所 代表取締役社長)、齋藤潤一(理事/AGRIST株式会社 代表取締役)、永山英也 宮崎市副市長)、杉田 剛(理事/クロスゴー 代表)※敬称略

歴史と先端技術をもつ「共立電機製作所」を訪問

1967(昭和42)年に「株式会社共立パネル製作所」を祖父が創業。それを「株式会社共立電機製作所」として事業を拡大させた父・充典さんは、家業の拡大のみならず宮崎商工会議所会頭を15年務めた人物で、その背中を見続けてきた後継者の一人、宮崎の新たな経済界を牽引するのが、米良充朝さん。コロナ禍の真っ只中、宮崎で初の日本商工会議所青年部の会長を務めたことからもその信頼の厚さと交流の広さがうかがえる。

現在米良さんが社長を務める株式会社共立電機製作所は、高圧受変電設備及びLED照明の設計・開発・製造等を行うものづくり企業。先日訪問し、工場見学をさせてもらった。

さまざまな企業が集積する宮崎市高岡町に大きな社屋と工場が建ち、グループ企業のなかでも最大規模というだけあって、外観以上に奥行きと高さのある広い工場と設備には驚くばかり。地元はもとより関西・関東方面の大型施設にも数多くの製品が使われているのだそう。

▲配電盤や照明、電光掲示板など、巨大な製造物から繊細なものまで幅広く手掛けている

▲巨大な球体は「全光束測定システム」。光は同社事業の核となる部分で、これ以外にもさまざまな実験施設を備えている。

▲社内には配電盤の初号機も展示。ここからスタートしたのだと思うと感慨深い

2022年に新たな事業としてスタートしたのが、同じ敷地内にある共立電照の社屋内に造られた閉鎖型植物工場「808MERA(やおやメラ)」。植物育成用の自社製造LEDパネルを使用し、無農薬、低細菌、水耕栽培で生産されている。温度や湿度等も管理されたクリーンルームで、レタスやハーブ、エディブルフラワーを実証的に栽培・販売している。

▲レタスだけでも数種類。そのまま摘んで食べられ、出荷後も比較的長く日持ちするとか

地域課題解決と自身の成長チャンス。「掛け合わせ」で挑戦

ここからは腰を据えて米良さんに直接インタビュー。自社の事業だけでも多忙に駆けまわる米良さんは、どんな思いでMOCに参画したのだろうか?同じ理事として、ざっくばらんに質問を投げさせてもらった。

齋藤:米良さんはどうしてMOCの理事になられたのですか?

米良:人口減少、高齢化による担い手不足、産業の低迷といった、宮崎市が直面する多くの課題があります。それに対して僕ら「承継組」は、地域に根ざした会社としてどのようなソリューションを提供していけるか、解決に寄与できるかといった壁に、挑戦すべきじゃないかと思ったのです。

「べつに僕がやるべきことじゃないから」と逃げることもできた。

でも、今ここから逃げたらこれ以上のお題を解決できる自分には、おそらくこの先5年10年巡り会えないだろうな、と。

正直に言えば、課題解決とか地元宮崎を盛り上げたいとか、かっこいい利他的な大義名分だけではありません。自分にとってMOCは、宮崎市が取り組もうとしている課題や挑戦と、自分自身がどう成長できるかの「掛け合わせ」の場です。

地元・宮崎の成長と、会社や社員の成長、社員の家族の豊かな生活を守ることは、僕にとってどちらも欠くことはできません。「逃げていいことは一個もねえ」を信条に、地域の課題にも自分事として本気で取り組むことで、きっと自分も会社も成長できるんじゃないかと思ったんです。

令和2年度は日本商工会議所青年部の会長を務め、退任のタイミングで「政治家にならないか」というお誘いも少なからずありました。でも僕にはまったくそのつもりはなくて。「じゃあ何がやりたいの?」と聞かれたとき、何のてらいもなく「現代の渋沢栄一になろうと思います」と言っている自分がいました。

普段からそう考えていたわけではないのに、口を突いて出てきた言葉にふと「それも悪くないな」と。渋沢は500の会社と600の団体をつくったそうですが、MOCを通してそういうことが実現できればいいなと思っています。

齋藤:渋沢栄一!なるほど、興味深いお話ですね。

米良さんがMOCの理事長に立つ意義は何だと思いますか?

米良:公民連携も大きな取組内容の一つで、その点市長ともほぼ同世代で、かねてからお付き合いのある永山副市長にとっても扱いやすい存在だと思います。

僕に期待されているのは「横串を刺すこと」だと思います。祖父や父の存在、地元に根ざした企業の経営者であり、日本商工会議所青年部の会長というみんなから顔が見える場に立たせていただいたこと、一方で齋藤さんのようなスタートアップや異業種の方々とのつながりもあります。

齋藤:理事長就任にあたり、永山さんにはどのような思いを共有しましたか?

米良:「スタートアップ組と僕ら承継組との垣根をなくしていくような団体にしていく必要がある」と伝えました。そうしないと、いつまでも助成金や補助金ありきでやっている組織と何ら変わらない。ただ官から降りてくるお金を待つような流れでは課題解決に繋がらないし、もっと新しい円滑なお金の回し方に取り組んでいく必要があると思っています。

「喧嘩腰になることもあるかもしれません。それでもいいですか」と言ったら、「いいですよ、好きに動いてください」とおっしゃってくださいました。

齋藤:…お二人ともさすがです!

垣根を超えた「混ざり合い」が大事。まずは我々が共創していこう

齋藤:具体的には、MOCで一番何に取り組みたいですか?

米良:先日宮崎市で開催された、第一次産業と他業種が混ざり合うイベント「ONE SUMMIT」に参加しました。全国からさまざまな産業の生産者、スタートアップ起業家、投資家の方々に来ていただき、それぞれの立場から意見を伝え合うことができる、本当に魅力的でおもしろい場でした。

▲ONE SUMMIT オープニングセッション。左から藤吉雅春氏(ForbesJAPAN編集長)、永山英也 宮崎市副市長、須藤靖洋氏(アメリカン・エキスプレス・インターナショナル,Inc.日本代表/社長)、筆者・齋藤潤一(AGRIST株式会社 代表取締役)※写真提供:一般社団法人ローカル・スタートアップ協会)

▲さまざまな業種・属性の人たちが混ざり合ったONE SUMMITの一場面 ※写真提供:一般社団法人ローカル・スタートアップ協会

日本は地方に行けば行くほど、細々と息長く事業を続けていらっしゃる会社が多い。スタートアップや成長を続ける企業さんのように、なぜ太く大きくすることを目指さないのでしょうか。ONE SUMMITでは起業家やスタートアップのみなさんの価値観や思考回路に触れて、非常にいい刺激になりました。

このような「混ざり合い」があると、大投資家じゃなくても地元で「1000万くらいならうちがんばって出せるよ」といった方たちが出てくる可能性もあります。その積み重ねでスタートアップを応援する気風が生まれたり、課題解決型の公民連携社会が実現するんじゃないかという気がしています。

「承継組」の人たちって、ちょっと斜に構えがちなところがあって。スタートアップや新しい気風の人たちと混ざる場をつくることで、彼らが本当に真剣に取り組んでいることに気がつくはずです。自分たちのリソースと新しい技術が掛け合わさったときに生まれる新しい未来へ向けて、スモールスタートから始めてみるのもいいと思うんです。

だから一番は「混ぜる」こと。スタートアップ系のみなさんと、地元に根ざして活動している、僕のような「承継組」を混ぜたり、宮崎の一次産業や食産業の方々との混ざり合いを促進していきたい。

産業、業態、領域などにとらわれず、とにかく「混ぜる」を続けること。一番力を入れたいのはここです。

齋藤:同意見ですね。さらに言うと、MOCが立てた3つの軸も混ぜ合わせた方がいいと思います。「農業×事業承継×スタートアップ」がキーワードになるかもしれないし、農業じゃなくてもいい。共立電機製作所さんの「光」も今後おもしろい掛け合わせができると思います。

MOCがスタートして半年過ぎましたが、僕と米良さんがまずはそれをやってみせることが今まさに重要なことではないでしょうか。「承継組」とスタートアップが「光」と「農業」で新たな挑戦をしているよ、と。僕らは理事の立場ではあるけれど、それをMOCがサポートしている様子をしっかり伝えていくことで、「あ、こういうことをやる組織なのね」と広く理解してもらいたいですね。

宮崎から世界へ、ぜひ一緒にイノベーションを起こしていきましょう!

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