PROJECT

第1回宮崎ローカルスタートアップピッチイベント開催しました

1粒1000円の磨きいちごの岩佐さんや西濃運輸の投資担当者らが参加!

宮崎のスタートアップ起業家と、投資家や実業家をつなぐ場です。

ピッチを通じて、ビジネスアイデアを投資家に直接アピールし、資金調達や事業拡大のチャンスを掴むきっかけをつくります。

【事業目的】

  • 宮崎県内のスタートアップの成長を加速させ、地域経済の活性化に貢献する。
  • 新規事業創出を促進し、地域産業の多様化を図る。
  • 地域の既存企業の事業承継を支援し、持続可能な地域経済の実現を目指す。

【事業概要】

  • 3ヶ月に1回程度、宮崎県内のスタートアップ企業を集め、投資家向けにピッチイベントを開催します。
  • ピッチ時間:5分 x 3名
  • 審査基準は、事業の革新性、市場性、チーム力
  • ピッチイベントを通じて、スタートアップ企業と投資家との個別面談をセッティングします。
  • ピッチ資料、事業計画書作成支援、資金調達に関するアドバイスを行います。

【タイムスケジュール】

18:30:開場

19:00:キーノートスピーチ(宮崎市参事立石様、MOC米良理事長、齋藤理事)

19:20:パネルディスカッション(モデレーター齋藤理事、セイノーホールディングス(株)河合様、(株)GRA岩佐様、サントリー大窪様、MOC米良理事長)

19:50:休憩

20:00:起業家ピッチ(ピッチ5分、フィードバック5分合計10分×3名) 

20:30:終了(1Fで懇親会:会費3,000円

【開催レポート】

起業家と投資家の出会いはビッグバンの予兆。宮崎ローカルスタートアップ ピッチイベント開幕!

2024年10月31日、宮崎市街地中心部にある拠点「若草HUTTE & co-ba MIYAZAKI」にて宮崎初のローカルスタートアップに焦点を当てたピッチイベントが開催された。このイベントは宮崎のスタートアップ起業家と投資家や実業家をつなぐことを目的に行われた。

ピッチを通じ、ビジネスアイデアを投資家に直接アピールすることで、資金調達や事業拡大のチャンスのきっかけを提供するものである。定期的に開催することで宮崎のスタートアップ企業の成長を促進させていく。

記念すべき第1回目では、ゲストに迎えた投資家を交えたセッションや起業家ピッチ内で熱く示唆に富んだ意見が飛び交った。それは宮崎のスタートアップへの期待や興奮の表れでもあった。

本記事ではその模様をお届けする。


オープニング:この瞬間から出資が決まるような瞬間をつくりたい

イントロダクションとして、イベントを主催する一般社団法人宮崎オープンシティ推進協議会(Miyazaki Opencity Council・通称「MOC(モック)」)の杉田剛創発本部長より、MOCの概要説明が行われた。

MOCは起業家育成や中小企業の支援、担い手不足の解消などを目的に2024年4月に創設。本イベントにも登壇する米良充朝理事長(株式会社共立電機製作所 代表取締役社長)を筆頭に、理事には齋藤潤一さん(AGRIST株式会社 代表取締役CEO)、前田真吾さん(前田労務管理事務所 所長)、村岡浩司さん(株式会社一平ホールディングス 代表取締役社長)、清山知憲宮崎市長が名を連ね、永山英也宮崎市副市長が顧問を務めている。

「ローカルスタートアップの発掘・創出」「地域企業のイノベーション創造」「食産業・農業の革新と発展」「交流・共創の場の創出」の4つの事業を柱に活動。同年6月には設立記念イベントとしてMOC FESを開催した。

本題に入る前に、齋藤潤一さんより本イベントの趣旨が語られた。自身もスタートアップ企業の経営に携わる身として、地域が良くなるためにはローカルスタートアップのエコシステムをつくらなければならないと強く感じていたという。

「今日、この瞬間から出資が決まるような瞬間をつくりたい」(齋藤さん)

その一言に注目が集まり、会場の温度が上がった。

宮崎ローカルスタートアップ ピッチイベントがついに開幕した。


キーノートスピーチ:濃密なコミュニティがローカルスタートアップを成長させていく

「宮崎におけるローカルスタートアップの課題」をテーマとしたキーノートセッション。ゲストとして立石建さん(宮崎市観光商工部 参事)、米良充朝さん(株式会社共立電機製作所 代表取締役)、前田真吾さん(前田労務管理事務所 所長)が登壇し、モデレーターを齋藤潤一さん(AGRIST株式会社 代表取締役CEO)が務めた。

県民性がイノベーションに影響する!? スタートアップの課題とは

立石さん(以下敬称略)

皆さん、こんばんは。宮崎市観光商工部参事を務めています立石建と申します。実は横浜市から移住してきてまだ1ヶ月(2024年10月31日時点)で宮崎を語れるほどではありません。ただ、横浜市役所ではスタートアップの育成や「YOXO BOX(よくぞボックス)」という拠点づくり、イノベーション投資に関わった経験からお話できることはあります。

拠点をつくる際に市役所として3年間でスタートアップに投資額100億円というミッションを根拠なく立ち上げたのですが、行政もそういう勢いや決意を示すことが官民かかわらずイノベーションを引き起こすきっかけになるのではと考えています。よろしくお願いいたします。

米良さん(以下敬称略)

宮崎オープンシティ推進協議会の理事長をしております米良充朝でございます。本日はお集まりいただきありがとうございます。

普段は株式会社共立電機製作所、および株式会社共立電照という2つの電気設備の製造業の社長を務めております。令和2年度には日本商工会議所青年部の全国の会長もさせていただきました。それらの経験を通して、国力とは国民一人ひとりの力の総和だろうと思っています。個人の力の総和があって、企業力の総和があって、地域力の総和がある。ですので宮崎という地域をMOCによってどんどん盛り上げていきたいと考えています。

前田さん(以下敬称略)

MOC理事をしております前田真吾と申します。よろしくお願いいたします。本業は社会保険労務士をしています。米良理事長のお話にもありましたが、私は宮崎商工会議所青年部の会長を務めたことがあります。商工会の青年部では地域をどう活性化していくかということを柱として活動していますので、地元に強い関心のある若い方がたくさん集まっています。

仕事柄いろんな企業様とお話します。2代目、3代目と長く続いている企業もあれば創業したばかりの企業もあり、経営者の年齢もさまざまです。そうした方々の出会いや交流の場をつくることが地域活性化につながると思っています。

齋藤さん(以下敬称略)

では、本題に入りますね。ローカルスタートアップを定義づけるならば、「経済的利益と社会課題の解決を両立」するような企業かと思います。それを踏まえつつ、皆さんには宮崎のスタートアップ企業における課題とは何かお聞きしたい。宮崎は農業生産額でいうと日本でもトップクラスでもあるので、農産物でのイノベーションは鍵になるかなと。

米良

課題感でいうと、最初の段階で遠慮というか気恥ずかしさを持っていて、萎縮してしまう方はいるなと感じています。何か新しいことをはじめるときは「正々堂々とやっちゃいなよ」と思いますね。自分なりの問題意識を周りの人に話して、ぶつかって、仲間を増やしていくことのできる雰囲気が宮崎にもできるといいですね。そうすれば成長意欲や向上心を持つ人たちのアイデアや事業の種がもっといい場所に飛んでいくと思います。

齋藤

仲間は「まさに」という気がします。スタートアップの悩みとして、メンターとして相談できる人がいないという話をよく聞きます。僕のやっているアグリストはベンチャーキャピタルに当初入っていただいて事業計画を一緒につくるなど伴走いただきました。今でも相談させていただいたり、今回のようなイベントに来ていただいたりと繋がりが維持されているのは大きいですね。

前田

米良さんのお話について、県民性があるでしょうね。対外的に見て宮崎県民は遠慮がちな傾向があります。全国のいろんな方と話すと、宮崎の方よりもバイタリティに溢れている。だから成長も早いのかなと感じたことがあります。ただ、県民性の良さも必ずあるはずです。それを強みに変えていく方法や考え方もあるはず。成功事例を1つ、2つ、3つと少しずつ増やしていくことが鍵になるのかなと思います。

齋藤

立石さん、横浜でスタートアップの拠点づくりをされたときにいろんな障壁があったと思うのですが、どんな苦労がありましたか?

立石

市役所に誰も味方がいない状態でしたね。責任もあなたが負いなさいみたいな。

当時はスタートアップといえば東京、それも渋谷の一強時代。ですので、強いところと組んでしまおうと、長谷部健渋谷区長のところへ行って協定を結びました。

渋谷だと今日のようなイベントの最中に起業家と投資家、あるいはサポーターとの繋がりがすぐ生まれます。その状態が宮崎でも生まれるのが望ましいのですが、私が市職員を見ていると諦めに似たものを感じます。宮崎特有の風土が作用しているのかどうかはわかりませんが。

齋藤

おっしゃる通りですね。ただ、僕はそこは分けて考える必要があると思います。行政職員のカルチャーとスタートアップのカルチャーは真逆なところがあります。行政の方々って災害や有事のときはずっと対策本部の仕事をしている。そんなときに「イノベーション!」といわれても困りますよね。官民のカルチャーを越えて連携していく。MOCができた理由の1つもそこにあると思います。

遠慮は必要ない。ネットワークの形成が閉塞感打破の鍵

齋藤

一通り課題が出たので、次は解決策を話していきたいと思います。前田さん、いかがでしょう?

前田

それこそ齋藤さんや今日お集まりの皆さんとつながり、ネットワークを築くことだと思いますね。成功事例やアイデアをお持ちの方がいっぱいいるんですから、この機会を逃すのはもったいない。

齋藤

遠慮がちな人を、今日みたいなおもしろい人たちが集まる場に誘ってあげることも必要ですよね。米良さんはどうですか?

米良

自分の中に意外性をつくることが大切だと思います。「私なんかが」と自分の可能性を限定しない。パッと頭に浮かんだことをとりあえずやってみる。極端な例ですが、朝起きたときに歯を磨く順番をいつもと変えようとか、そういう気軽なことでいい。いつもと違う一歩を踏み出す、ネットワークをつくるというのはそれらの延長線上にあると思います。

齋藤

一歩という意味では、僕はスタートアップ側に重要なポイントとして「しつこさ」があると思います。興味がある人やコラボしたい企業に「この人本当にしつこいな」と思われるくらい何回も連絡をとる、会いに行くというアクションは大切にしたほうがいい。

立石

人間的な距離感も大切な要素ですよね。哲学的な話ですが、自分はどう生きていくべきかみたいな議論を交わした関係性だと、何かあったときにお互い助け合える。私が宮崎へ移るときに横浜の仲間が「立石さんだったら手弁当で手伝うよ」といってくれました。宮崎で「誰か」を手伝いたい人が増えていくためにも、今日のような出会いの場があることは鍵となりますよね。

齋藤

立石さんのおっしゃられたことは「濃密なコミュニティ」とも言い換えられるなと思います。僕はこの宮崎でも、ローカルスタートアップの卵を見つけて、磨き上げて、みんなで応援していくというコミュニティを生みたい。それをMOCとしてつくり上げたいなと思います。その結果として、すばらしいスタートアップの生まれる未来をつくりたい。まずはMOCがロールモデルになることを目指したいですね。

では、そろそろお時間です。キーノートセッションは以上になります。ありがとうございました。


パネルディスカッション:投資家が出資したくなる条件とは。キーワードは「人」「シナジー」「ブランディング」「タイミング」

投資家を招いてのパネルディスカッション。ゲストとして岩佐大輝さん(株式会社GRA 代表取締役CEO)、河合秀治さん(セイノーホールディングス株式会社 執行役員/セイノーラストワンマイル株式会社 代表取締役社長)、大窪信一さん(サントリーホールディングス株式会社 未来事業開発部)が登壇した。モデレーターを齋藤潤一さんが務め、投資家目線による活発な議論が交わされた。

人としての相性、自社事業へのシナジーは必須項目

岩佐さん(以下敬称略)

こんばんは、宮城県から参りました岩佐大輝と申します。株式会社GRAというイチゴ生産を軸とした会社を経営しております。イチゴ生産を始めた当時は、農業にITを活用することが、まだ珍しかった時代でした。データを徹底的にとって栽培をマニュアル化することで「儲かる農業」みたいなスタイルが確立され、今に至ります。

あと、個人の活動ではエンジェル投資家として、起業したばかりの方の支援、LP出資といってファンドに出資して間接的に応援するっていうこともやっています。本日はよろしくお願いいたします。

河合さん(以下敬称略)

こんばんは、セイノーホールディングス株式会社の河合秀治でございます。よろしくお願いします。皆さんご存知かと思いますがカンガルーのマークの運送会社です。 

私自身は物流業界に25年おりまして2011年には社内起業も経験しました。現在は新規事業やM&Aが管掌領域となっています。投資の目線、新規事業を行っている目線、起業家の目線、この3つの目線からお話ができればと思っています。

大窪さん(以下敬称略)

大窪信一と申します。サントリーホールディングス株式会社の未来事業開発部で仕事をしてます。サントリーは飲料や健康食品が有名ですが、私たちはいわゆるコーポレートベンチャーキャピタルのようなところで、スタートアップと一緒に事業を開発していくようなことを行っています。よろしくお願いいたします。

齋藤さん(以下敬称略)

自己紹介ありがとうございます。それではゲスト3名と一緒に「なぜ私たちは宮崎に出資しないのか」というテーマでセッションしたいと思います。「どのような条件がそろうと出資をしやすいのか」という点も、皆さんにお聞きしたいと思います。

大窪

私たちサントリーの投資領域はフードテック、ヘルス&ウエルネス、サステナビリティ、AI・データの4領域となっています。出資には一定の線引きをしています。顧客基盤があって事業を成長させていく段階にあり、かつベンチャーキャピタルがついていて、私たちはフォローで入る。新規事業を一緒につくっていきたいという思いもあるので、ある程度は成長したスタートアップと手を組みたい。そこに合致しなかったら見送りとなります。

宮崎だから出資する・しないという考えもありません。イノベーションあるいは競争優位性があるのか、事業的な相性ももちろんですが、人としての相性も判断材料にしています。

河合

我々の場合、バリューチェーンにイノベーションを起こせるスタートアップを投資先に選んでいます。それは物流が事業活動のいろんな部分に関与することが多いためです。我々が半分くらいリードを取りにいっていますね。

自社内の戦略として倉庫の多機能化を進めていますが、今だと、その戦略の先にあるようなスタートアップとはご一緒しやすいですね。たとえば、私たちはドローンのスタートアップに投資をしていますが、これはもともと中山間地域の物流をどうしていくかという戦略がある中で「ドローン配送」というアイデアが出てきた。そこで出資金を予算としてスタートアップとプロジェクトをつくり社会実装させるというやり方をとりました。

岩佐

私はエンジェル投資家なので、スタートアップでも本当に初期段階の出資が多いですね。それもあり「人」で判断しています。事業領域でいえば地域・食・テクノロジーが合わさるところへ出資しています。出資先とはメンターとしてアドバイスを行うなど並走する関係性でいます。

齋藤

「人」は仲間づくりという点でも重要なキーワードだと思いますし、自社事業へのシナジーという点も、自社内でイノベーションが生まれ収益性が上がるという点で大切な要素ですね。

最新テクノロジーを掛け合わせることで価値を生む

大窪

少し話がずれますが、今日ピッチに登壇される大田原さんですが、宮崎でカカオを育てるだなんて良い意味でのクレイジーさを感じています。でも、そこは起業家にとって重要な部分だと思うんです。右往左往しながら自分のやりたいことを追求していくと時代が追いついてくる可能性がある。いかに「ない」ものを先手をとって事業化し、継続できるか。そして、いかに時代に適合させていくか。

そういう意味では、最近はAIをはじめとするテクノロジー分野への出資も行っています。AI花嫁キャラクターを開発・提供している会社があるのですが、そちらのサービスを利用すると、ホログラム化されたキャラクターと一緒に食事の時間を楽しむことができる。

サントリーは飲料を提供しているので、シナジー的な話でいうと、食事の場面は五感で楽しむだけでなく、「いつ・誰と・どこで・どんな雰囲気で」食べるかという「第6」のおいしさがあります。そこは重要なファクターになりますよね。

齋藤

「食べる」「飲む」という可能性が広がっていく点において、テクノロジーとスケーラビリティは出資の判断材料になりますよね。AGRISTでもピーマンやキュウリのデータを蓄積してマイクロソフトと一緒に収量予測AIの開発を行っています。

岩佐

齋藤さんや大田原さんのような農業分野のスタートアップの難しさとして、リードタイムの長さがありますよね。たとえば、カカオなら植樹してから成木になるまで約10年かかるわけです。人の一生でも5回のリードタイムを回せるかどうかの長さ。そうなると事業が成長していくためには1社でやっても全くダメ。いかに多くの仲間をつくり、オープンに技術や情報を共有し、生産にかかるデータを集め、かつシェアできるかが鍵になります。

そこから発展して、栽培方法がノウハウ化されて、事業を拡大していける見通しや技術が確立されるところまでいけば出資したくなりますね。

齋藤

大田原さんのカカオ畑に伺ったとき、河合さんも生育期間がネックになるなら海外から仕入れるという方法もあるんじゃないかとおっしゃってましたよね。

河合

時間をいかに短縮するかは物流としてお手伝いできる点かなと思います。我々としてもスケーリングは重要視していますから、全国にある支店を活用していただいて事業が成長していけばシナジーが期待できます。

ブランディングはマネタイズと一緒に考える

齋藤

これまで事業をいかにスケールできるか、あるいは出資側として自社にシナジーが生まれるかという点を話してきましたが、もう1つスタートアップ側に必要なことがあると思っています。

それが何かというと、社長と伴走できるNo.2がいること。宮崎カカオには小野さんというNo.2がいて、その存在はすごく大きい。「こんなにおもしろい事業をやっているんだったら自分もジョインしたい」と入社されたようですが、No.1の熱量に感化されて一緒にやりたい人がついてくるというのは外せない要素かなと思います。

大窪さんはほかに重要だなと思う点はありますか?

大窪

私はブランディングをすごく気にしています。それはマネタイズにも関わるという理由もあります。大田原さんにお話を聞くと、カカオのキロ単価は下は1,000円以下から上は1万円まで大きな幅があります。それならば、買い手が1万円を出したくなる付加価値が必要になる。そこをクリアにできるかは出資できるかどうかの重要なポイントになります。

実は、私たちは一度AGRISTさんへの出資を検討する機会があったのですが、この理由で見送ったことがあります。ロボットでピーマンを収穫することによって、ピーマンそのものが甘くなるなど何かしらの付加価値が生まれるのかという問いに対して、そのタイミングでは明確なものがなく、出資には至りませんでした。

齋藤

その点はおっしゃる通りですね。そのときはブランディングよりも、収穫の担い手不足を解消するべくいかに効率性を上げるかという点に焦点を合わせていました。そういう意味では、タイミングも重要な点だと思います。

さて、お時間も迫ってきました。投資家がどのような判断基準で出資先を選んでいるのか参考になったのではないでしょうか。次はいよいよ起業家によるピッチとなります。岩佐さん、河合さん、大窪さん、ありがとうございました。


起業家ピッチ開幕! 妥協なき緊迫の瞬間

本イベントの目玉でありラストを飾る起業家ピッチ。今回は大田原尊之さん(宮崎カカオ)、服部かおるさん(株式会社HATSUTORI 代表取締役)、奥田裕貴さん(株式会社OKUDA 代表取締役)の3人の若き起業家が登壇。投資家側として話を聞くのはパネルディスカッションに登壇した岩佐さん、河合さん、大窪さんの3人。

ピッチ5分・フィードバック5分の緊迫した空気のなか、投資家による鋭い指摘、激励が飛び交った。

世界に誇る国産カカオ豆を宮崎から

最初のピッチに登壇したのは宮崎カカオの大田原尊之さんだ。大田原さんは宮崎県庁の職員として働いていたころ「クラフトチョコレート」に出会った。高品質なカカオ豆と砂糖のみでつくられ、産地や品種によって変化するフレーバーに感動し、宮崎でのカカオ栽培を決意したという。2023年からは宮崎県の総合農業試験場や食品開発センターと連携し、栽培技術の確立と普及、一次加工技術の開発などを行っている。

「カカオの健康上のメリットが周知されていることもありチョコレート市場は成長傾向にあります。日本では栽培が普及していない今、県産のカカオを宮崎の特産物にしたい」(大田原さん)

2026年には県産カカオ豆の販売を開始し、2027年には世界的品評会への出品、県産素材とのコラボ商品化を検討しているという。

フィードバックタイム

河合

スケーリングという観点からお聞きしたいのですが、カカオの栽培だけでなく製品化や6次化は考えていらっしゃいますか?

大田原さん(以下、敬称略)

はい、予定しています。まず、カカオの果肉は生で食べることができるので果実として出荷ができます。また、カカオ豆を砕いた「カカオニブ」はスーパーフードとして注目されています。近年の健康志向の高まりと相性が良いこともあり、私たちも商品として扱いたいと考えています。

さらに、カカオ豆に含まれる油分からつくられるカカオバターは食品だけでなく化粧品にも使われています。ですので、食品に限定せず生活用品など幅広く展開していきたいと考えています。

大窪

競争優位性についてお聞きしたいのですが、宮崎産カカオはほかと比べて味がいい、質が高いなどの要素はありますか?

大田原

現在の国内での栽培状況ですが、沖縄と小笠原でそれぞれ一ヶ所ずつ栽培が行われています。ですが、カカオ豆の発酵試験中だったりと比較ができないというのが現状です。しかし、栽培条件を考えると、宮崎は、それら二ヶ所に比べ日照時間が長いため、収量の優位性はあると感じています。

岩佐

ビジネスのあり方についてお聞きします。大田原さんは、スタートアップとしてこのビジネスを日本や世界を代表するものへ育てていきたいのか、あるいはご自身の生業としてある程度の規模感で行っていきたいのか。いかがでしょう?

大田原

私自身は宮崎県をカカオ日本一の生産地にしたいと考えています。宮崎の特産品といえば今は「マンゴー」と返ってくることが多いのですが、「いやいや、カカオだよ」といわれるレベルにはしたい。そして、ゆくゆくは宮崎だけでなく日本を代表するような品質のカカオ生産を目指したいと考えています。

宮崎発のバイオ炭製造技術が未来をつくる

次に登壇したのは株式会社HATSUTORIの服部かおるさん。服部さんは看護師・助産師として働いたあと、経営学を学ぶため宮崎産業経営大学に進学。学生対象のビジネスプランコンテストに出場したことを機に大手建設会社からバイオ炭に関する研究開発を受託することになった。

HATSUTORIのバイオ炭はダムに溜まる流木、林地残材など、従来なら廃棄される木材を主な原料としてつくられている。

「バイオ炭は木質資源の有効活用はもちろん、製造時の環境負荷を軽減することができます。また、CO2の貯留効果、土壌の健全化にも役立ちます」(服部さん)

共同開発した製炭炉は化石燃料をいっさい使わずに火をつけるだけで炭化可能。また、移動式でさまざまな場所に設置ができ、通常の炭化に数日〜数週間かかる工程を1〜5時間に短縮。さらに、服部さんが最も推す乾燥技術は、通常、数ヶ月〜1年かかる工程を1〜2日で実現してしまうほどだ。

服部さんはバイオ炭を通じ環境問題の解決、地域の活性化、持続可能な産業を目指す。

フィードバックタイム

岩佐

製炭の効率化はすばらしいですね。具体的な質問になりますが製炭炉は移動できるんですか? 

服部さん(以下、敬称略)

できます。4トンユニック車で運べるように設計をしています。搬入場所はユニック車でないと入れない道も多いので、なるべくそのサイズに収まる炉を開発しています。

岩佐

炭の品質はいかがですか?

服部

弊社のバイオ炭はすばらしいんですよ。中性から弱酸性の傾向にありますので、農業されてる方、土壌改良にいかがでしょうか。

大窪

3つ質問させてください。1つ目はマネタイズポイント。2つ目はどのくらいの市場規模を見込んでいるのか。3つ目は山に製炭炉を持っていくとなると規制があると思うのですが、どのようにクリアされているのか。

服部

まず、マネタイズから。今のところ開発にお金がかかっていますが、製炭炉は弊社でしか買うことはできません。ですので、製炭炉が売れる分だけ見込みが立ちます。

市場規模については、製炭炉自体は100億いきませんが、乾燥技術を合わせると格段に上がります。

法規制の部分なんですが、行政の方と一緒に話をしながら進めていますし、環境基準にかかるものは分析していたただいて全てクリアになっています。消防法についても同様です。

河合

私からは2つよろしいですか。1つは特許はどうなっているのか。2つ目は質問ではなく、ビジネスとしてご一緒できるのではと思いました。私たち物流業は木製パレットを使って荷物を運んでいるのですが、この処理費に年間で約3億円かかっています。廃棄すればいいというものでもないので、この領域で組めることがあるのではないかと思っています。

服部

ありがとうございます。ぜひ一緒にできましたら嬉しいです。製炭炉に関しては、HATSUTORIと一緒に開発をしている大手2社とで共同特許を出してます。

希少種マンゴー「パルメロ」を宮崎を代表する特産物へ

ピッチ登壇3人目は株式会社OKUDAの奥田裕貴さん。奥田さんはプロサッカーチーム「テゲバジャーロ宮崎」の選手として活躍する傍ら会社経営を行っている(本イベント後の11月14日、2024年シーズンでの現役引退を表明)。奥田さんはお世話になった農家のつくる新種マンゴーが周知されない問題に接したことで起業を決意。希少種マンゴー「パルメロ」の独占販売権を取得し、販売・ブランディング・マネジメントを行っている。

宮崎マンゴーは産出額日本一。しかし、今では産地が全国に広がり、また、輸送に伴うコストや鮮度問題もありブランド価値が落ちることが危惧されている。

「日本のマンゴー市場は『アーウィン』という品種が95%以上を占めています。マンゴーが浸透してきた今、新しい品種が求められる可能性は大いにあります。パルメロは糖度が非常に高く、甘みが強く、香りが良い。農家直送で鮮度抜群、安心安全なものをお客様にお届けできます」(奥田さん)

大手企業との取引実績を重ね、今後はBtoCの強化や輸出を考えている。また、マンゴー事業を成長させながら新規事業としてバニラビーンズの栽培、養殖ウナギの販売も準備中だ。

フィードバックタイム

大窪

奥田さんはパルメロを広げたいのか、それとも宮崎にあるいろんな希少種を取り扱って、第2、第3のパルメロのようなものを広げていくビジネスをされたいのか。どちらでしょうか?

奥田さん(以下、敬称略)

まずはパルメロのブランド価値を確立したいですね。宮崎のマンゴーといえば太陽のタマゴが有名ですが、パルメロがもう1つの強みになることによって宮崎県産マンゴー全体のブランド価値の底上げにつながると考えています。

また、マンゴーに限らず宮崎はおいしいものが多いので、バニラビーンズをはじめ土地の気候に合った生産物を取り扱っていければと思っています。

河合

私も同じ質問だったのですが、マンゴーもバニラビーンズもウナギもやっているとなると、どの事業に強くコミットしていくのかというのが気になりました。地元の生産者はいいものをつくっているけれど、販促ができないなどの課題があると思うんです。そこを「宮崎にはいろんなブランドがあるんですよ」とPRするような、商社的な機能も含めて担っていくのであれば、そちらの方が魅力的にも聞こえます。

奥田

ありがとうございます。もともとパルメロは現在の市場流通では認知が広がらず、農家さんたちも困っていたという経緯があります。宮崎は本当にいいものはありますが、ブランディングして高付加価値によって販売するところに関してはまだまだかなと。私にもできるところがあると思い、商社的な役割を担いたいと思っています。

河合

モデルとなって横展開できると、さらに幅が広がるような気がしますし、大きな強みになるんじゃないかなと思いますね。

岩佐

私からの質問は、ご自身の価値をどう捉えているのかお聞きしたいです。マンゴー農家さんと消費者の間に奥田さんが介在する価値について。何を価値とお考えになってビジネスを広げていきたいのかという点について教えてください。

奥田

農家さんの頑張りが正当に評価されないことに憤りを感じていました。苦労を重ね、結果としておいしいものをつくっているのに、なぜなんだろうと。自分もサッカー選手として多くの方に助けられてここまでやってこれたと思っています。お世話になった恩義もありますし、本当にいいものを光を浴びるところへ持っていきたいと考えています。

岩佐

その志はいいですね。パルメロは排他的に他の人が使えないから利点があると思うのですが、ウナギなどは自分だけ取り扱うことはできませんよね。そこをどうクリアにしていくか。地域商社としてどのように生産者のお役に立てるか、ご自身の価値を伸ばしていくタイミングにあるのかなと思いました。応援します。ありがとうございました。


クロージング:ライブ感溢れる場がコミュニティを醸成し、イノベーションが生まれる

熱狂に包まれた濃密な時間はあっという間に過ぎた。ゲストや起業家だけでなく、参加者全員が混ざり合い、お互いの意見を交わし合ったイベントとなった。一人ひとりの顔は生き生きとしており、会場全体はポジティブな雰囲気が漂っていた。

「宮崎市が市制100年を迎えたわけですが、投資家と起業家が同じ場で出資する・しないというライブ感溢れるやりとりをしたのは市の歴史上初めてではないでしょうか。宮崎の人たちは『頑張る人を応援しよう』という気持ちが強いなとは以前から感じています。今日来場いただいた皆さんで濃密なコミュニティをつくっていきたい。チャンスやイノベーションが生まれる機会を一緒につくっていきましょう」(齋藤さん)

齋藤さんはクロージングの挨拶で連帯を促した。

冷めやらぬ熱狂、次回イベントへの期待が高まるなか、第1回宮崎ローカルスタートアップピッチイベントが幕を閉じた。


今回のイベントは登壇したゲスト・起業家にも大きな影響を与えた。

以下に登壇者たちのコメントを紹介したい。

米良充朝さん

最初のステップとしてはすごく楽しめたイベントでした。投資家を相手に宮崎でもこんな事業ができるんだぞとアピールする場を設けられたのは良かった。独特の緊張感が漂うなか、私も話を聞いていて興奮しました。この年齢になっても吸収できることがあるんだなと。自分も負けていられません。この初回の熱気を冷ますことなく2回目につなげていくことが一番大事だと思います。ピッチに登壇いただいた3名が今後どのように活躍されるのか楽しみです。

前田真吾さん

いろんな実績を持った方の話を聞くことで考えが深まる場でした。登壇された方も観覧されていた方も、それぞれ立つラインが異なるでしょうから、同意する意見もあれば、その逆もあると思います。それで良くて、気づきや発見があることがこの場所の意義だと思います。今回のイベントのような機会にどんどん参加する人がチャンスを掴むのでしょう。「私がこんな場所に参加していいのかな」という遠慮はいりません。どんどん混ざっていきましょう。

立石建さん

ファシリテーターを務められた齋藤潤一さんなどのご尽力で投資の可能性に関する活気に満ちたピッチイベントでした。登壇いただいた「パルメロ」の奥田商店とは、その後、海外販路開拓の話が続いており、参加者がそれぞれご自身のネットワークをつなげ、投資につながる、このような取組が宮崎で定期的に開催されることを期待します。

岩佐大輝さん

宮崎の若い、とくに一次産業や地域課題に根差した事業に取り組んでいる方々と出会えて刺激をいただきました。私のいる宮城県仙台市とカルチャーが似ていると感じています。宮崎はこれから盛り上がりますよ。課題としては、生き馬の目を抜くギラギラとした東京のスタートアップにどう立ち向かうか。成長スピードやマーケットの変化がまるで違う。そういう意味では、ある程度のスピード感を持って事業を行うことが大切ですね。

河合秀治さん

物流業として貢献できることは大いにあるなと確信しました。とくに宮崎は陸送が厳しい地域ですから、最適なサプライチェーンを組まない限りは、良い商品でもまったく流通しないという問題も起こりかねない。宮崎のみんなの商品を1つのコンテナにまとめて東京や大阪などに運ぶ流通網ができたらおもしろそうだと今日の話を聞いてて思いました。一緒に運べば輸送コストは下がります。そういう流通の仕方、ネットワークづくりが進むと最高におもしろいでしょうね。

大窪信一さん

スタートアップの視点から言うと、宮崎の土地性をを上手に生かしている人たちがいるのだなと感じました。東京にいたら流木が大変だなんて思わない。カカオも育てようがありません。加えて東京は土地が狭いので空間を使うには縦に延びがちですが、宮崎は横に延ばせる強みがある。それは大都市に対する強力なカウンターパンチになる。これから事業を興す方々にはそういった差異やポテンシャルを存分に生かしてほしいなと思います。

大田原尊之さん

満員だったのですごく緊張しました。ですが、いざ話し出すと止まらなくなっていました。少しでもカカオの魅力を伝えられたのではないかと思います。いろんな方から応援されてこそ成り立つ事業ですので、カカオの魅力だけでなく今後の方向性も発信していくことが大事だなと感じられたピッチでした。とても有意義な体験をさせていただきました。

服部かおるさん

事業を継続するうえで「事業の確からしさ」を求められている今、さまざまな課題を乗り越えていくためのノウハウを学ぶ機会をいただけたことは今の私にとってとても大きなことでした。また、スタートアップ企業に携わる身として、新規事業を扱う上での大手企業の立場や、現場を知っているからこその裏話しをお聞きすることができ、大変有意義な時間でした。

奥田裕貴さん

ピッチで登壇するのは初めてなこともあり、すごくいい経験になりました。現在のマンゴー事業を伸ばしながら新規事業も行っていきたいと考えています。ご指摘いただいたように、今後の展開を明確にして大きな目標を持っていかなければならないと身が引き締まります。また、この場において日常にはない出会いがあったのも大きな財産でした。この経験を今後につなげていきたいですね。


イベント名 宮崎ローカルスタートアップ ピッチイベント
開催日程 2024/10/31(木)
開催場所 若草HUTTE & co-ba MIYAZAKI (宮崎市橘通東3丁目5)
地図
参加費 無料(懇親会参加費:3,000円)
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